工藤悠一郎さん(昭和40年卒)のエッセイ

 

6回目の石巻訪問

 

 大震災から6ヶ月経った2011年9月にはじめて倶楽部グリーで石巻を訪問してから今回が6回目の訪問となった。(9月24~25日)

 

 まさに津波の厳しかった渡波(わたのは)地区である。町は壊滅的な状況で復興のきざしすらなかった。訪問した小学校の体育館は避難所となっていた。ダンボールで仕切られたそれぞれの個室で半年間暮らしていたのである。今回、その第一回のときに聴いてくれたというお婆さんが聴きにきてくれた。すっきりとした元気そうな姿から復興が着実に進んでいるというたくましい感じを読み取ることができた。

 

 震災から日時が経過するとボランティアの方々の活動も変化してきている。今までは東京などからのボランティアのお蔭で演奏会を開催していたのであるが、自前で演奏会を開催するとなると会場確保、集客などで多大な負担をかけてしまう。そこで今回は「渡波地区復興祭」という地元の行事にわれわれも参加するというかたちでの演奏となった。折角、東京から行くのであるからと復興祭だけでなく地元の老人ホームと新設されたキリスト教教会でミニコンサートも行った。どの会場も喜んでいただき涙を流す姿も散見された。われわれ全員にお土産に手作りのポケットティッシュ入れを用意してくれていた方もいてありがたく頂戴してきた。

 

 6回も訪問すると顔なじみの方もでき、お互い久しぶりの再会を喜ぶことができるのが、何よりもすばらしいことと思う。そして年ごとに明るくたくましく生活している被災者の方々には頭がさがるばかりである。津波で家々は全壊したのであるが、5年も経つと新築だった家並みも落ち着いた住宅街へと変貌していて町も町民も活気にあふれてきているように思えた。

「また来てください」「来年も待ってます」などと云われてしまうと自然と来年もくることになるのだろうなと思う。

 

 今年も宿泊はわれわれの追っかけのように演奏会を聴きにきてくれていたNさんの宿舎である。民宿でそんなに収容人員も多くないのにわれわれ24名を受け入れてくれるのである。学生時代の合宿を思い出すようなにぎやかな1泊である。夕食は今年も庭でのバーベキユーである。採れたてのサンマはうまかったし、ホタテもシャコもワタリガニも、そして定番の肉、野菜などすべてうまかったが小生がとりわけ気に入ったのは新米でつくってくれた「塩むすび」であった。醤油をかけてバーベキュー網で焼いた「焼きおにぎり」も絶品であった。おかげで帰ってから体重計に乗ったら、今までの涙のでるような努力も水の泡となり、またゼロからの出発となったのである。「体重と塩分には気をつけろ」と会うたびに云いつづけている医者からは大目玉をくらいそうである。

 

 平均年齢72歳、認知症予備軍の倶楽部グリーの演奏旅行であったが、若干は予備軍らしい事象もあったが全員無事にそして元気に帰ってこられたのがよかったよ。

 

                 2016年10月

 

 

 

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